クリスマスの奇跡・5
By nokko様


クリスマス・イブ−
恋人たちへの、最高の式典。

その日、快斗は家で一人ぽつん、と座っていた。
何もやる気がしない。
キッドである意味−それは、快斗が快斗である意味でもあったのだが−が分からなくなってくる。
昨日対峙した相手は、親父のライバルだった。親父を超えるために存在し、その対象が消えてしまったあと、
気がふれてしまったらしい。自分を親父と同一とみなし、親父として、即ちキッドとして行動していた。そして、
新たに登場した正統な跡取りである、『俺』−彼の中の『キッド』を脅かす存在−に狙いを定めた。『親』と
名乗れば、誘いに乗ってくると、そう思ったのであろう。狂ったままの心を持って。
『キッド』は、狂うまでしがみつくような存在ではない。
親父の残したそれ−
そのために、幼馴染を傷つけるなんて。
苦しい−
痛くて、死んでしまいそうだ。
この世に存在していることが罪であるような気がして、快斗は瞳を閉じた。
ぱらり、と目にかかる前髪。
暗闇だ−
快斗がその暗闇の中に沈み込みそうになったとき、ガタっと後ろから音がして快斗は顔を上げた。
そこにいたのは−
サンタの格好をした、青子。
「・・・え?」
「快斗っ!メリ〜クリスマス!」
にこにこ笑いながら部屋へ入ってきた彼女に、快斗は訳が分からず動揺する。
「これね、青子が焼いたクッキー!すごいでしょ〜しかも、今日はケーキも持ってきたんだから!」
「あ・・・おこ?」
「それにね、プレゼントもたんまりと!お金使い果たしちゃった。」
「・・・」
「しかもしかもっ!このかわゆいサンタの姿!快斗、可愛いって思うでしょv」
「あの〜青子ちゃん?」
「あっ!そうだ忘れてた!これこれ!快斗欲しがってたやつ!」
「だーーー!ちょっと待て!コラ!」
まくしたてる青子に、快斗が参ったとばかり声を張り上げた。
青子はそんな快斗にふっと優しく笑みをこぼす。
「−よかった。いつもの快斗だね。」
そう言って青子は快斗を見つめると、ふんわり、と柔らかく微笑んだ。その微笑みに先ほどまで凍っていた
快斗の心が溶けてゆく。
「青子、何も聞かないから・・・。快斗が納得して、話してくれるまで。」
真剣な表情でそう言うと、それを一瞬で消してえへっと笑ってみせる青子に。
−ほんと、どうしようもない・・・。
快斗はすっと腕を伸ばして、サンタ姿の彼女をきつく抱きしめた。
「−快斗・・・?」
青子が苦しそうに言葉をつむぐ。
「わり・・・。ちょっとこのままでいさせて。」
青子から快斗の表情は見えない。自分を抱きしめてくる彼の体が少し震えていることに気づかないように、
無理やり心をコントロールして、青子は快斗の背中に手を回した。


感謝すべきなのは−
クリスマスの奇跡か?
いや、違う−想いが、奇跡を作り上げるのだ。
奇跡を作り上げていくのは、人なのだから。


△▲△▲△▲


工藤家ではささやかなクリスマスパーティが行われていた。
事件を片付け、ゆっくりする新一と蘭、二人だけのパーティ。
豪勢な食事も、蘭の手作り。
飾られたツリーも、二人でこしらえたもの。
アットホームな雰囲気で、二人は和やかにそのときを楽しんでいた。
「でもよかったね。」
「何が?」
肉にフォークを差しながら尋ねてきた新一に、蘭は軽く微笑む。
「青子ちゃんのこと。−受け止めるのは、簡単じゃないと思うけど。」
「でもなんで受け止められたんだ?お前、なんか言った?」
昨晩、蘭がずっとつきっきりで青子と共にいたのを新一は知っている。快斗と青子の経緯は先ほど蘭に
聞いたが、その時尋ねられなかったそれがずっと気にかかっていたのだ。
新一の質問に、蘭はにこっと笑って、「さあね?」そう言うと、その質問をやり過ごそうとするようにシャンパンに
手を伸ばした。
「・・・。」
新一は蘭の真意が分かってそれ以上の言及はよした。気を取り直して、同じようにシャンパンを口に含む。
「ね、新一。事件の方は片付いたの?」
「ああ。幸い軽症だったらしいけど、奴はお縄。ただ、精神鑑定で異常が見つかる可能性が高いって
 話だけど。」
その言葉に、「そっか」と言って寂しそうに微笑んだ彼女に、新一は目を細める。
「ばーか。なんでお前が暗い顔すんだよ。」
そう言ってコツンとオデコを叩いた彼を蘭はじっと見つめて、
「新一は、人の心の闇を覗くことがいやじゃない?」
真面目な表情でそう問いかけた。
その言葉に新一はふっと笑って席を立つと、蘭の後ろに回りこむ。
「俺には、これがあるから。」
そう言って後ろからぎゅっと蘭を抱きしめると、蘭はくすぐったそうに身を縮めた。
「これって・・・どれ?」
突然の不意打ちに顔を赤くしながら、しかし不思議そうに尋ねた蘭に、「分かんねーなら教えてやるよ。」
そう言って彼女を自分の方に向かせると、ゆっくり唇を落としていく。
「・・・ありがとう。」
そう言った、彼女の言葉を飲み込んで。
二人の穏やかなクリスマスの時は過ぎていく−。


全ての人々に奇跡を。
奇跡という名の魔法を。
優しさに包まれた時間の中で、奇跡を感じ取れる、そんなクリスマスを。
どうか、全ての人がおくれますように。


<了>



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リベンジに成功してる新一がカッコ良かったですv
お父さんの関わる事で余裕をなくしてる快斗もらしくてツボでした。
盗一さんの事だと冷静でいられなくなると思うのです。
もちろん1番形無しになってしまうのは青子ちゃんに関する事だと思いますがv
突っ走っていく彼氏達を見守ってる彼女達が素敵でした!
ホント、怪盗も名探偵も幸せ者ですよね(笑)
クリスマス当日の快青のシーンが好きです!新蘭もラブラブで嬉しいv
nokkoさん、素敵なクリスマスプレゼントをありがとうございました!!

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