Over


自分の部屋を飛び出した快斗は、白馬に宣戦布告を突きつけるべく、白馬とまだ彼と一緒にいるだろう
青子を探した。
IQ400の頭脳と怪盗をやりながら鍛えた勘を総動員して2人の行方を追う。
それほど時間はかからずに2人を見つけたのは、青子の家に程近い公園の事だった。
送ってきた白馬と離れがたくて、ココで話をしているという事なのだろうか?
気分が落ち込みそうになる想像を追い出して、快斗はベンチに座って話している2人へと近づいて
行った。
「青子っ!」
「か、快斗!どうしてココにいるの?」
快斗の呼びかけに振り向いた青子が、快斗を見て気まずそうな表情を浮かべた。
「オメーに話があるんだ。」
「話って・・・。」
困ったように口篭った青子をかばうように、白馬が口を挟んだ。
「思ったよりも来るのが遅かったですね。」
「うっせーよ。」
白馬の言い草にムッとしながらも、快斗は彼の方へと向き直って告げた。
「お前にも話がある。」
「何の話ですか?」
涼しい顔でとぼけてみせる白馬に頭に血が上りそうになるのを抑えて。
「決まってんだろーが!宣戦布告だっ!」
快斗は息を吸い込んで大声で宣言した。
「お前なんかに青子は絶対に渡さねーっ!」
「バ、バ快斗!!いきなり変なコト言わないでよ!」
快斗の宣言に即座に反応したのは、顔を真っ赤に染めた青子の方だった。
白馬はというと余裕で腕なんか組みながら「ほーう。」と呟いたりしていた。
とりあえず白馬の事は捨て置いて、快斗は青子へと話を続けた。
「変な事じゃねーよ!オレは青子を手放すつもりなんてねーからなっ!!」
「だから、ナニ言ってんのよ〜?」
快斗は困惑したように声を上げる青子を無視して、言いたい事を全部言ってしまうつもりだった。
「青子が白馬に心変わりしたって言っても、またオレの方を振り向かせてみせるから!」
「ちょっ・・・。」
「オレの隣にいるのは青子だけだって、もうずっと前から決めてんだ!」
「かい・・・。」
「潔く身を引くなんて、絶対にしねーからな!」
「だから・・・。」
「白馬のヤローに青子を譲ったりしねーから、覚悟しとけよ!!」
「だから、ちょっと待ってって言ってるでしょ〜〜〜っ!!!」
1人熱くなってまくし立てていた快斗は、青子の大声に遮られて目をパチクリとさせた。
目の前にいる青子を見れば、これ以上ないというくらい頬を赤く染めていて。
「バ快斗っ!!」
ようやく口を挟む事が出来た青子は開口1番そう言った。
「何だよ。」
ムッとした声を上げる快斗の言葉に被せるように青子は続けた。
「バ快斗なんだから、バ快斗って言って何が悪いのよ〜!?
 まったく何を勘違いしてるの?」
「か、勘違い?」
「そうよ。ちょっと白馬君と一緒にいただけで、なんで青子が心変わりしたとか、
 そういう風になっちゃうのよ〜?」
自分の気持ちを疑うのかと憤慨している青子に嘘は感じられなくて、快斗は大いに混乱した。
青子は白馬に心変わりした訳じゃないのか?
青子の言葉を信じて喜ぼうとする感情に、理性がストップをかける。
だったら、先程見た光景は何だというのだ?
「オメー、さっき白馬とキスしてなかったか・・・?」
「なっ・・・!!バカバカバ快斗っ!!そんな事する訳ないじゃないっ!!!」
恐る恐る訊ねた快斗に、猛烈な勢いで否定が返ってきた。
「もうっ!なんでそんな勘違いしてるのよ!?バ快斗の大バカ!!」
茫然とした快斗が何も言えないままに青子のお怒りの言葉を受けていると、それまで黙って静観していた
白馬がようやく言葉を発した。
「青子君、彼が勘違いしているのは、ひょっとしてあの時の事じゃないですか?」
「あの時?」
きょとんとして首を傾げる青子に、白馬は更に言葉を付け足した。
「ほら、大通りを歩いていた時に、青子君の顔に・・・。」
「あぁ、あの時の?」
ポンと両手でも打ちそうな勢いで青子は頷いた。
「あの時って何だよ?」
仲良さそうに会話する青子と白馬にムッとして快斗が憮然と訊ねた。
青子はそんな快斗をおかしそうに見ながら真相を告げた。
「ホントにバ快斗なんだから!
 白馬君はね、青子の目元についてたゴミを取ってくれただけだよ。」
「はぁ〜〜〜?」
思ってもみない答えに気の抜けた表情になった快斗に、青子はクスクスと笑い出した。
快斗がバツが悪くて青子から視線を逸らすと、にやりと笑う白馬と目が合った。
(あんにゃろ〜!!)
白馬に浮かんだ笑みを見て、快斗は全て分かった。
絶対に確信犯に違いない!
あの時、快斗が2人を見ているのに気がついて、白馬は悪巧みをしたのだ。
青子の目元にゴミなんかついてなかったはずだ。
快斗がじと〜っと白馬を睨むと、声を出さずに白馬の唇が動いた。
『この前の借りを返しただけですよ。』
借りってなんだ?
ちょっとだけ考えてすぐに答えに思い当たった快斗は、こちらも唇だけで『何の事だよ?』と返す。
訳が分からないというフリをしながら、快斗はがくっと力が抜けるのを感じた。
この前、白馬が怪盗キッドの現場に来ていた時、意外に簡単と盗めてしまったのに気を良くして、
キッドというか快斗は調子に乗って彼をからかったのだ。
その仕返しという訳か。
「それでは、ちょっと約束があるので行きますね。」
ここが潮時と判断したのか、脱力している快斗を尻目に白馬が青子へと告げた。
「うん。また明日、学校でね!」
青子はひらひらと手を振りながら白馬を見送っていたけれど、快斗は悠々と去っていく白馬の背中に
心の中でバカヤロー!と叫んでいた。





「だからね、白馬君のお父さんが誘ってくれたの。」
全てのコトの真相が判明したのは、青子の家へと向かう道すがらだった。
とりあえず2人でどこか行こうかと話がまとまってから、動きにくいし汚したらイヤだから着替えたいと
青子が言い出したのだ。
「うちのお父さんに白馬君がお世話になってるから、食事でもどうかって。
 あと、お父さんがキッドを追いかけて頑張ってるから、その壮行会みたいな意味もあったかな?」
キッドを追いかけてると言ったところで、青子はイタズラっぽく快斗を見たけれど、快斗は黙って
先を促した。
「でね、青子と白馬君がクラスが同じだって知って、だったら青子も一緒にって言ってくれて。
 今日は4人で食事に行って来たの。
 食事の後、お父さん達は今日も仕事あるから、白馬君が送ってくれたのよ。」
「ふーん。」
これでなんで青子が白馬と一緒にいたのかは分かった。
ちょっと背伸びした格好をしている訳も。
「なんでそれをオレに言わなかったんだよ?」
「・・・だって、言ったら快斗は行くなって言ったでしょ?」
図星を指されて一瞬だけ動きを止めたけれど、快斗は何とかポーカーフェイスを保って否定した。
「言わねーよ。」
「ホントに?」
「あぁ。だから、今度からはちゃんと言えよな。」
またこんな事があったらたまらないと、快斗は釘を刺しておくのを忘れなかった。
「はーい。・・・でも、それだけじゃないんだけどね。」
素直に返事をした後、青子が小声でポツリと告げられた言葉を快斗は聞きとがめた。
「何だよ?」
「う〜ん、お父さんが変なコト言うからちょっとね。」
失敗したという顔で笑ってごまかそうとする青子に、快斗は追及の手を緩めなかった。
「変な事って何だよ?」
「う〜。・・・お父さん、まるでお見合いみたいだなって。」
「見合いだ〜〜〜っ!?」
青子が小さな声でボソボソと白状した言葉に、快斗は素っ頓狂な声を上げた。
「バ快斗!声が大きいってば!」
すかさず注意してから、青子はどこかスッキリしたような顔で告げた。
「だから、快斗にもそんな風に思われたらイヤだな〜って思って言えなかったの!」
そう言われれば、まぁ何とか納得はできる。
快斗の反応を気にしてたのは、可愛いと言えば可愛いし。
(でも、だからって秘密にされる方がよっぽど心臓にわりぃけどな。)
快斗は心の中でぼやくに止めて、1番気になっている事を青子に聞く事にした。
「それじゃ、もう1コ質問。」
「なぁに?」
「オメー、オレの事避けてただろ?何でだ?」
直球勝負でずばっと訊ねた快斗に、青子はうっと詰まった。
その頬が微かに赤くなって見えるのは気のせいだろうか?
不思議に思いながら、快斗は答えを待った。
「そ、それは・・・。」
「それは?」
真剣な顔で青子を見つめている快斗に、青子は観念して告げた。
「もうっ!快斗があんな事を言うのがいけないのよ!!」
「へっ?」
いきなり自分のせいにされて、快斗が訝しげに眉を寄せる。
「あんな事?」
さっぱり分かっていない快斗に、青子は言いにくそうに続けた。
「だから、青子が風邪ひいた時、無理矢理約束させたでしょ?
 風邪が治ったら、その・・・青子から、キスしろって。」
「あ〜っ!!」
青子の様子がおかしい事に気を取られて、すっかり記憶の彼方にふっ飛ばしていた事を快斗は
ようやく思い出した。
そういえば、そんな約束を青子とした。
「そんな約束させるから、快斗を見ると恥ずかしいっていうか、落ち着かないっていうか・・・。
 妙に意識しちゃって普通に出来なかったの!」
照れ隠しなのか、ちょっとだけ怒ったような口調で青子は話した。
「そうしたら、快斗も何だか様子がおかしいし。
 怒っちゃったのかなって思ったら、余計にぐるぐるしちゃって・・・。
 でも、快斗は勘違いしてただけなんだね。良かった。」
ホッとしたように笑顔を見せた青子を、快斗は魂が抜けたように見つめていた。
(・・・じゃあ、何か?オレは自分で墓穴を掘ってたって言うのかよ〜〜〜っ!?)
この1週間の自分の勘違い+悩みっぷりを思い返して、快斗はそれはそれは深〜い溜め息をついた。
「青子・・・。」
「なに?」
「その約束、もういーから普通にしててくれよ・・・。」
「えっ、いいの?」
力のない声で告げた快斗に、どうやって約束を守ればいいか悩んでいたらしい青子は、
ぱっと明るい表情になった。
それを見て寂しく感じない訳でもないけれど、快斗はこれでいつも通りの生活が戻って来る事に
ホッと胸を撫で下ろした。





その後、青子の家に着いた時のコト。
鍵を開けようとする青子の背中に、快斗はずっと気になっていた問いをぶつけた。
「青子、やっぱりオレは言葉が足りねーのか?」
「えっ?」
ビックリしたように目を大きくしながら、青子が快斗を振り返った。
「ほら、前にオメー拗ねてただろ?オメーにはキッドみたいな気障な事とかそーいうの言えねーから。」
気まずそうに青子から視線を逸らして小さな声で呟く快斗に、青子の表情が和らいだ。
「もしかして、ずっと気にしてたの?」
「・・・・・。」
答えがないのが肯定の証。
どことなく所在なさげに立っている快斗に、青子は柔らかな笑みを浮かべた。
「あのね、青子は女の子なら誰にでも言ってるキッドの気障な言葉よりも、青子だけに言ってくれる
 快斗の不器用な言葉の方がずっとず〜っと好きだよ!」
言われた言葉に快斗がばっと顔を上げて青子を見ると、彼女はどこか照れくさそうな表情をしていて。
「さっき公園で言ってくれた事も嬉しかったから・・・。」
快斗はぐいっと襟を引っ張られるのを感じた。
次の瞬間には、唇に柔らかくて温かな感触。
「・・・じゃあ、青子は着替えてくるから、リビングで待ってて。」
快斗が我に返る前に、顔を赤くした青子は身を翻して玄関の中に消えてしまった。
残された快斗はというと     .
結局、青子が着替えて出てくるまで、青子からの初めてのキスの余韻に浸りながら、
玄関の前でぼ〜っと突っ立っていたのだった。


<了>


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Image Song:Over(Song by Mr. Children)

という訳で、結局は快斗が勘違いして1人でドタバタとしていただけの話でした(笑)
快斗視点で進めて行ったので、最初かなり不穏な感じになってしまってどうしよ〜と思っていたのですが、
最後に軌道修正できたかな?目指していたのは↑のような軽〜い話だったんです。
青子ちゃん視点で書いていったなら可愛らしい話になったかなとも思うんですが、
何しろ元ネタが男性視点の失恋ソングだったので。
Over、ちょっと切ないけど良い歌ですよ〜。ミスチルの中では1,2を争う位好きです。
この歌、そんな事は絶対ないと思いつつ、もしも快斗が青子ちゃんに振られてしまったら・・・という
想像にピッタリだと思うんですがどうでしょう?

そういえば、白馬君が快斗に優位なのが書いてて何だか楽しかったです(笑)
やっぱり快斗は青子ちゃんに関する事には形なしなのね〜みたいな。
白馬君にはこんな風にキッドにやられた借りを返していて欲しいものです(笑)
ちなみに、私の中での裏設定では、この話の白馬君と紅子ちゃんはお付き合いしてます。
紅子ちゃんが快斗のドタバタぶりを余裕で見ていたのはその所為だったり。
あと白馬君が約束していた相手は紅子ちゃんだったりします(笑)
オマケで書こうと思ったんですが、ちょっと力尽きてしまって断念。
ひょっとしたらそのうち書くかも?全然たいしたモノではないんですが。

それにしても改めて読んでみると、どうにも少女マンガのような話ですね(苦笑)
まぁ、こういうの結構好きなので自分的にはオッケーですがv



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