26.告白(快斗×青子)
う〜、どうしようどうしよう。
快斗、絶対怒っちゃったよね・・・?
青子の口から飛び出した特大の溜め息は、寒い冬の空気の中に白く溶けて消えた。
学校からの帰り道、隣にいつもいる快斗の姿はなかった。
いつもはあっという間に着いてしまう家も、今日はとてつもなく遠く思える。
また1つ、溜め息が零れた。



そもそもどうしてこんな事態になったのかといえば、他の誰の所為でもなく青子の所為。
ついこの間の晩、青子はふと気がついちゃったんだ。

     快斗が好きなんだってコトに。

今まで小説やマンガとかで『恋が突然舞い降りた』なんてフレーズを見かけたコトがあったけど、
青子はそんなコトあるのかな?って意味が全然分からなかった。
でも、それはホントだった。
快斗とはずっと幼なじみをしていて、その日だって特に何かあったってワケじゃなかったのに、
ホントに突然、快斗が好きだなぁって思っちゃったの。
青子にとってはすっごくビックリな出来事だった。
それから、青子がどうしたのかといえば・・・つい快斗を避けちゃっていた。
だって、快斗の傍にいるとドキドキしちゃって普通にできないんだもんっ!
快斗と目が合うだけで頬っぺたに熱が集まってくるのが分かるし、
快斗にちょっと触れられただけで心臓が飛び出しそうになっちゃう。
快斗ってばよく青子に触ってくるんだよね。
ホント、セクハラ大魔神なんだから!
でも、快斗がこんな風に気安く触れるのって青子だけだから、それはちょっと嬉しいかも。
って、触られるコトはもちろん全然嬉しくないよ!
だけど、快斗って意外にモテるんだもん。
バカやってないで真面目な顔してれば意外にカッコ良いから。
いたずらっ子のような笑顔も、見慣れてるはずの青子もたまにぼぉっと見惚れちゃうコトも
ある位だし。
だから、他の子よりも快斗に近い距離にいれるような気がするのが嬉しいのはホントなの。
・・・あんまり良くない気持ちだよね、これ。
快斗を好きって気がついてから、快斗が女の子と話してるともやもやしちゃう時もあるし、
時には胸がチクって痛い時もあるし。
そういう時はきっと変な顔になってるから、なおさら快斗の傍になんていられないよ〜。
自分でも可愛くないなぁって思うもん。
かと言って、快斗と2人だけでいても頭グルグルになって挙動不審になっちゃう。
だからね、青子は快斗を避けていたんだ。



俯いて歩きながら口からはまた溜め息。
さっきから溜め息ばっかで、そのうち肺の中の空気が全部なくなっちゃいそうだよ。
今日の放課後、とうとう快斗に捕まって問い詰められちゃったの。
どうしたんだよ、オメー変だぞって。
青子は何でもないよって逃げてきちゃったから、きっと快斗すっごく怒ってると思う。
今の青子みたいな態度を快斗に取られたら、青子だって怒ると思うもん。
でも、今までのように幼なじみの態度を取ろうと思っても、ちゃんとできる自信ないよ。
青子、何でもすぐ顔に出ちゃうんだもん。
快斗にいつもオメーは嘘つけねーヤツだよなって呆れられてるし。
どうしたら良いのかな・・・?
さっきからずっと考えてて、もう訳が分からなくなってきちゃったんだけど、
はっきり分かっているコトが1つある。
それは青子の快斗に対する態度が悪かったコト。
明日、朝1番にこれだけは快斗に謝らなきゃ。
その後、快斗の近くにいて普通にできるかどうかはものすごく自信ないけど。
とりあえずの方針が決まって顔を上げた時には、もう家の前だった。
そして、門の前に居たのは見慣れたボサボサ頭。
ウソっ!な、なんで快斗がウチの前にいるの〜?!
謝ろうって思ったけど、まだ心の準備なんてできてないのに!
頭がパニックになった青子はUターンしようと思ったけれど、
その前に快斗に気がつかれてしまった。
「もう逃がさねーぞ!」
走ってきた快斗に手をぎゅっとつかまれて、痛い位の力にもう逃げられないと悟る。
しょうがなく快斗に向き直って快斗の顔を見上げて、青子は息を飲んだ。
いつもお茶らけている快斗が、すっごく真剣な表情を浮かべていた。
「なんでオレを避けるんだよ?オレが何かしたのか?」
「ううん、そんなコトないよ!青子が悪いの、ごめんね。」
「謝らなくていいから理由を言えよ、理由を!」
顔を覗き込んでくる快斗から視線を逸らして、青子は足元を見つめた。
理由を言えって言われても困るよ。
だって、理由を言ったら青子が快斗を好きだってバレバレでしょ?
告白なんてまだ考えてなかったし、快斗だってきっと青子のコト、単なる幼なじみとしか
思ってないから困っちゃうと思うし。
そんなこんなで青子が答えられずにいたら、快斗が大きく息を吐き出して青子の手を放した。
「わぁったよ。」
分かったって何が?
青子の心に浮かんだ疑問に答えるように快斗が口を開いた。
「なんか知らねーけど嫌われちまったみたいだし、もうオメーには近づかねーようにするから。」
その言葉にビックリして青子が顔を上げると、快斗は寂しそうな笑顔を浮かべていた。
胸がぎゅうっと締め付けられるような気分になる。
お日様の笑顔が似合う快斗に、そんな表情をして欲しくないよ。
なんて言えば良いのか、青子が迷っているうちに、快斗はどんどん話を進めていった。
「でも、クラスメイトなんだし、挨拶ぐれーは普通にしろよな?それじゃ、オレ行くから。」
オレと一緒に居たくねーだろうし、と快斗が小さく呟いたのが聞こえた。
どうしよう、快斗すごい勘違いしてる。
快斗が嫌いなんて、快斗と一緒に居たくないなんてコトないのに。
踵を返した快斗の背中がゆっくりと遠くなる。
イヤだと思った。
ドキドキして挙動不審になっちゃっても、もやもやするコトがあっても、
やっぱり青子は快斗と一緒に居たいよ!
「快斗、待って!!」
青子の声に快斗は立ち止まって振り返った。
青子に嫌われたと勘違いしてる快斗に何を伝えれば良いんだろう?
そう考えて浮かんだのはたった1つの気持ち。
まだ伝えようとは思ってなかったけど、誤解を解くにはこれしかないよね?
え〜い、当たって砕けろ!女は度胸よっ!!
「あのね、青子は快斗が好きなのっ!」
「へっ?」
青子の一世一代の告白に返ってきたのは、ものすごく間の抜けた声だった。
青子はビックリしている快斗の顔を見ながら、ハトが豆鉄砲を食らったような顔って
こういう顔を言うのかなぁなんて、関係ないコトを頭の片隅で考えていた。
・・・そうでもしないと、恥ずかしくて顔から火を噴いちゃいそうだったから。
「おいおい、ちょっと待てよ。今のマジか?」
驚きから我に返ったのか、快斗がカバンを放り投げて青子の両肩を掴む。
すっごく恥ずかしかったけど、青子は快斗から視線を逸らさずにこくんと小さく頷いた。
「じゃあ、なんでオレの事を避けてたんだよ?」
「それは、その・・・。」
「何だよ?」
重ねて訊ねられて、青子はとうとう観念した。
「だって、快斗といるとドキドキしちゃって普通にしていられないんだもん!!」
開き直って叫んだ青子に快斗はしばらく考えた後、呆れたような表情を浮かべた。
でも、眼差しが優しい気がするのは青子の気のせい?
「ったく、オメーはアホ子だな。」
「なによ〜、快斗が好きって気がついちゃったんだからしょうがないでしょ!」
にやにや笑いの快斗からそっぽを向くと、急に腕を引っ張られて     唇に柔らかい感触が
そっと触れた。
い、今のって、まさか・・・?
青子が事態を理解する前に、快斗にぎゅっと抱き締められて耳元にイタズラっぽい囁きが
落ちてきた。
「これからずっと一緒にいるんだから、さっさと慣れろよな。」
「え?」
「だから、オレも青子が好きだって言ってんの!これからもずっと一緒だろ?」
快斗の腕の中で顔を上げると、今まで見たコトないような表情で快斗が笑っていた。
心の底から自然に笑顔が湧き上がってきちゃっているみたいに。
きっと今の青子と同じだね。
嬉しくて嬉しくて、顔が緩んじゃうのが止められない。
「うんっ、ずっと一緒にいようね!」
快斗の背中に青子も腕を回して抱きつくと、快斗が抱き締め返してくれた。
また青子の鼓動がちょっとだけスピードアップする。
でも、優しい温もりに包まれながら、こういうドキドキだったら慣れなくても楽しいかなって、
こっそり思ったのは青子だけのヒミツ。


物々交換という訳ではありませんが、このお題はミシマさんにリクして頂きましたv
青子ちゃんから告白というリクだったので、青子ちゃん一人称で書いてみました。
が、青子ちゃんの一人称はやっぱりすごく難しい!
可愛く書けていたら良いなぁ。


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