25.腕を組む(快斗&青子)
「次はどこ行こうか?」
「どこでもいいからさっさと決めろよ。」
「んー、じゃあね・・・」
面倒くさそうな快斗の声にも関わらず、青子は楽しそうにトロピカルマリンランドのマップを
覗き込んでいた。
何故か知らないけれど今日の青子はずっとご機嫌で、可愛い笑顔を振りまいていた。
見慣れているはずの青子の笑顔に妙にドキドキしてしまって、快斗はポーカーフェイスを
貼り付けるのに一苦労だった。
「じゃあ、ここにしよっ!ここでいい?」
「・・・あぁ。」
下から覗き込むように訊ねられて、不用意に赤面してしまいそうなのを必死に堪える。
このまま青子と真っ直ぐ目を合わせていたら心臓がもたないと逸らした視線の先に、
快斗は不愉快なものを見つけた。
青子をぽけっと見つめている自分と同じ歳ぐらいの男。
連鎖的に先程の出来事を思い出して、ただでさえ良いと言えない快斗の機嫌は急降下する。
さっき快斗がジュースを買いに行っている時、青子が道案内をしてあげようとしていたのは
別に問題なかった。
・・・その男がナンパ目的じゃなければ。
ナンパ野郎なんてすぐに蹴散らしてやったけれど、こうやって似たような輩がすぐに現れる。
今日の青子は男の視線を集めまくっていて、快斗が隣で睨みをきかせているだけでは
足りないようだった。
青子の細い肩を抱き寄せて自分のモノだと主張したいけれど、ただの幼なじみである自分に
そんな権利がないのは重々分かっている。
(んな風にへらへら笑ってんじゃねーよ!)
口を開けば理不尽にも青子を責めてしまいそうで、快斗が自分の心の狭さに溜め息を
つきたくなった時。
柔らかい感触が快斗の腕に絡んで引っ張った。
「快斗!ぼ〜っとしてないで早く行こうよ!」
「おまっ・・・腕を放せよ!」
「だって、快斗ったらいつまでも動かないんだもん。」
快斗に向かってちょっと唇を尖らせながら、青子は快斗の腕を放さずにどんどんと進んでいく。
流れていく景色の中に悔しそうに肩をすくめている男の姿が映って、ざまぁみろと快斗は
心の中で盛大にあっかんべぇをした。
幼なじみの気安さだったとしても、こんな近い距離にいれるのは青子が心を許してくれて
いるから。
それに実情はどうであれ、こうしていると本当の恋人同士のようで、自分に向けられる
羨望の眼差しが気持ち良い。
途端に気分が上向いた自分の単純さに呆れながらも、快斗はようやく久々の遊園地を
楽しむ気分になった。
けれど、急に機嫌が良くなるのも変だから、わざとさっきまでの不機嫌を装って青子に
声をかける。
「そんなに急がなくてもアトラクションは逃げねーよ。」
「・・・つまんない?」
小さく呟かれた言葉がよく聞き取れなくて、快斗が眉を寄せる。
「ごめんね。青子が無理に誘ったから・・・。」
青子は快斗を見ずに前を向いたまま、元気のない声で謝った。
ここのところ、ずっと忙しそうにしていた幼なじみ。
一緒に出掛ける事もなくて寂しかったから、青子からここに来ようと誘ったら
快斗はオーケーしてくれた。
久し振りに快斗と遊べる事が嬉しくて今まで気がつかなかったけれど、思い返せば快斗はずっと
仏頂面をしていた。
(迷惑だったのかな・・・。)
肩を落とした青子の頭の上に大きな手が降りてきた。
そのままわしゃわしゃとかき混ぜられて、青子はむっとして顔を上げた。
「何するのよ〜!」
「おっ、いつものアホ子だな。」
イジワル笑顔を浮かべた快斗はそっぽを向いてから、ぼそぼそとした声で付け足した。
「・・・悪かったよ。でも、折角の休日に嫌なトコに付き合うほどオレは暇じゃねーって。」
「ホントに?」
「んな事で嘘ついてどーすんだよ。ほら、さっさと行くぞ。」
「か、快斗!」
いきなり青子の手をとって歩き出した快斗に、青子が慌てた声を上げた。
「お子様青子が迷ったら困るからな。」
「もうっ!お子様じゃないって何度言ったら分かるの?!」
そう言いながらも、繋いだ手を放そうとしない青子に快斗はくすりと笑いを漏らした。

2人の間でその日はずっと、繋がれた手は楽しそうに揺れていたのだった。


腕を組むのはずが、いつの間にか手を繋ぐに早変わり(苦笑)おかしいなぁ・・・。
でも、久し振りに幼なじみな2人が書けて楽しかったです。
ありがちネタですが、それもまた楽しいという事で♪
ちなみに、快斗の不機嫌には、そこかしこにいるお魚さんが一役買っていたりして(笑)
なんと言ってもトロピカルマリンランドですから、お魚さんはいっぱいだったに違いない(笑)


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