16.共犯、共謀(青子+紅子)
「ねぇねぇ、紅子ちゃん!日曜日に皆でお花見に行かない?」
クラスの中心で何やら楽しそうに話していた青子が、教室へと入ってきた紅子の元に
駆け寄ってきた。
「お花見?」
「うん!中央公園の桜が満開ですっごく綺麗なの。皆でお花見したらきっと楽しいよv
 紅子ちゃんも一緒にどう?」
わくわくと返事を待つ青子の姿に、しっぽを振る愛らしい子犬が紅子の脳裏に思い浮かんだ。
それから、少しだけ呆れにも似た気持ちを感じた。
こういった行事に紅子が参加する事などないのに、青子は必ず声をかけてくるのだ。
「私は遠慮しますわ。」
「そっか〜、残念。」
しゅんと肩を落とした青子から、落胆がひしひしと伝わってくる。
こんな風に誘いを断った時、青子に対してつい申し訳なく思ってしまう自分が紅子は嫌だった。
「話はそれだけかしら?」
青子が頷くのを確認して、紅子は自分の机へと向かった。
「あっ、そうだ。紅子ちゃん!」
何かを思い出したような声がかかり、振り返った紅子の足が止まった。
「なに?」
「あのね、お花見の話は快斗には内緒にしてくれる?」
思いがけない言葉に、紅子がその切れ長の眼を少し大きくした。
元々の性格がそうなのか、マジシャンというエンターティナーな職業を目指しているせいか、
快斗はこういった行事ではちょうど良い盛り上げ役になるというのに。
実際、青子と2人、クラスの中心で騒いでいる姿をよく見かけていた。
「どうして?」
「いきなり公園に連れて行ってビックリさせようと思ってるの。」
未だに訝しげな表情の紅子に、青子は先程からクラスメイトに繰り返した説明をする。
「快斗にはいつも驚かされてばっかりじゃない?だから、たまにはこっちが驚かせちゃおうって。」
きっと他のクラスメイト達はいつも快斗にイジワルされている青子を知っているから、
それに対するささやかな仕返しだと思って承諾したに違いない。
青子の計画を微笑ましく思いながらも、ノリの良いクラスの事だから快斗を驚かすという事自体も
楽しみにして。
「それだけ?」
けれど、紅子は青子の笑顔の中にほんの少し影があるような気がしてストレートに訊ねた。
「そ、それだけだよ。」
さ迷った視線に、その言葉に嘘があるのが分かる。
紅子はそれ以上言葉を重ねずに静かに待った。
やがて全てを見通すような紅子の瞳に観念したのか、青子がためらいがちに口を開いた。
「最近の快斗、ちょっと元気がないと思わない?」
「・・・そうかしら?」
紅子の目にはいつもと変わらなかったように映っていた。
でも、青子がそう言うのならきっとそうなのだろう。
あっさりと認めてしまった自分の心に、紅子は苦笑した。
「うん、ポーカーフェイスなんて言ってるけど、青子には分かるもん。」
ぼ〜っと窓の外を見ている快斗の横顔に、どこか疲労が滲んでいるように見えた。
その理由は分からなかったけれど、何となく快斗に聞ける雰囲気ではなかった。
快斗が話さない事を無理に聞く気はないから、代わりに青子に出来る事を考えたのだ。
それがクラス中を巻き込んでのお花見の理由。
「だからね、気分転換になれば良いなと思ったんだけど、始めから知ってたら
 きっと気を遣っちゃうから。」
幼い頃から快斗のマジックに楽しませてきてもらったから、マジックにはタネも仕掛けも
必要な事を青子は充分分かっている。
例え魔法のようでも、何もないトコロから花を取り出すのは物理的に不可能なのだから。
けれど、準備をしなきゃとか、そういう事を考えずに、快斗には純粋に楽しんで欲しかった。
「そう・・・。」
紅子の静かな声にはっと我に返った青子は、無意味に手を振って慌てた。
今更だけれど、今までの発言は何だかものすごく快斗が好きみたいに
聞こえなかっただろうか。
「あ、あのね。皆とお花見したいっていうのが1番の理由だから!
 快斗の事はオマケだからね!!」
「本当かしら?黒羽君が1番の理由ではなくて?」
「違うよ〜。」
頬を桜色に染めて否定しても真実味は感じられない。
くすりと笑みを零した紅子に、青子は居心地が悪そうに身動ぎした。
「まぁ、いいわ。黒羽君には秘密にしておくわ。」
「ありがとう、紅子ちゃん。」
追及の手を止めた紅子に、ホッとした表情を浮かべて青子がお礼を言った。
(・・・本当に素直ね。)
思っている事がすぐに顔に表れる青子に、紅子は呆れとも感嘆とも判断つかない気持ちに
なった。
それから、ふと思いついた事を口にした。
「日曜日、晴れるようにおまじないしておいてあげるわ。」
それは魔女のちょっとした気紛れ。
参加するつもりはないが、可愛い計画の片棒を担ぐのも良いかもしれないと。
そう思ってしまったのは誰の為なのか、はっきりと答えはでないけれど。
「ホントに?ありがとうっ!!」
途端に咲いた満面の笑みに、紅子の気分も華やぐ。
2人の間に、窓から入ってきた穏やかな春風が桜の花びらを運んできた。


快青でいこうかとも思ったんですが、シリアスになってしまいそうだったので、女の子2人組♪
この2人のコンビ、意外に好きだったりしますv
本当は仲良しさんバージョン(笑)で書き始めたんですが、紅子ちゃんがキャラ違う気がして
原作風味にしてみたり。
ちなみに、クラス全体が共謀という事で(笑)あ〜、お花見行きた〜い!


30 Titles+α
Home