13.手を伸ばす(快斗×青子)
授業をふけて屋上の入り口の上に登って寝転がった。
容易に他人には見つからない格好の場所。
どこまでも澄んだ青空に、吹き抜けていく風は穏やかで最高の昼寝日和。
けれど、短い眠りの中に訪れたのは、最悪な夢だった。

「・・いと、快斗!」
「ぅん?」
耳によく馴染んだ声に眠りの海から引き起こされて、快斗はゆっくりと目を開けた。
「起きた?」
いつの間にか隣に座っていたらしい青子が声をかけてくる。
「いつから居たんだ?」
目に入る太陽の輝きが眩しくて、快斗は何度か瞬きを繰り返した。
青子はどこか子供っぽい快斗の仕草に小さく笑みを零した。
「さっき。教室に戻ろう?」
身軽に立ち上がった青子が未だに横たわったままの快斗に向かって手を伸ばした。
太陽を背景に立つ青子の姿に、快斗は目を細めた。
伸ばされた手はどこまでも白く、触れるのが躊躇われる。
「快斗?」
いつまでも動こうとしない快斗に、青子が軽く首を傾げた。
逆光で分からないけれど、その大きな瞳に不思議そうな色を浮かべているんだろう。
(今更、か・・・。)
密かに自嘲して、快斗は差し出された青子の手に自分の手を重ねた。
軽く引っ張るだけで、簡単に堕ちてくる華奢な身体。
難なく受け止めて腕の中に閉じ込めた。
「ちょっ・・・快斗〜?!」
慌てた声を上げた青子は快斗の腕から逃れようとしたけれど、快斗が少し腕に力を込めると
大人しくなった。
快斗はそんな青子にふっと小さく笑って、自分の上にいる青子を抱いたまま空を見上げた。
腕の中の青子から伝わってくる温かさも少し早い鼓動も、青子の存在を確かに伝えてくれる。
悪い夢にこわばっていた心が緩々と溶け出すようで、快斗はどこか安堵を含んだ息を吐き出した。
ようやく太陽の温かさを感じられるようになって、そこで初めて青子の小さな嘘に気がついた。
空に浮かぶ太陽は明るさを保ちながらも、すでに傾きかけている。
この傾き加減だと、授業はもう終わっているはずだ。
きっと青子は昼休みに戻ってこない快斗を心配して探しにきて、ここで昼寝している快斗を
発見したのだろう。
それから、ずっと快斗の眠りを見守っていてくれていた?
青子に訊ねても正直には答えないだろうけれど、そんな気がした。
「・・・ねぇ、快斗。」
「なんだ?」
しばらく沈黙を続けていた青子が、少しだけ迷うように話し出した。
「青子は何があっても快斗の傍にいるよ。だから、大丈夫だよ。」
ゆっくりと言い聞かせるように囁く声はとても優しくて、快斗の心の中にわずかに残っていた
不安も消していく。
快斗は静かに目を瞑った。
何だかとても嬉しいと同時に、とても情けない気持ちになるのはどうしてだろう。
青子を守っているつもりで、こうして守られている。
そして、青子はどこまでも優しく包み込んでくれるから、際限なく甘えてしまう。
今だってそうだ。
ただ傍にいて眠りを見守って、うなされていたら悪夢から救い上げてくれて。
それだけで充分なはずなのに、心は青子の温かさを求めている。
いつもだったらこの衝動を止めてくれるはずの理性も今は働かない。
「きゃぁ!」
青子を抱えたまま横に転がった快斗に、青子が小さく声を上げる。
そして、今度は見上げる体勢になった快斗に何か話そうと動きかけた唇を、
快斗は自分のそれで塞いだ。
重ねては離れて、何度も繰り返されるキスに青子の息が上がっていく。
「夢のこと、忘れさせてくれよ。」
青子に小休止を与えるように少しだけ離れて、囁いた言葉は荒く息を紡ぐ青子に
伝わるかどうかは分からなかったけれど。
少し見開かれた青子の瞳を最後に、快斗はただ青子の温かさに溺れる事にした。

彼の願いが聞き入れられたかどうかは、2人だけの秘密。


このお題達は色っぽくいこうと思っていて挫折しているのですが(笑)、軌道修正しようかなと
頑張ってみました。・・・が、単に快斗がへたれな話になってしまいました(苦笑)
なんでこんなにへたれなんだろう〜。よっぽど夢見が悪かったようです(笑)
とりあえず、学校の屋上で何やってんだ〜と突っ込まれる前に突っ込んでおきます(笑)


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