01.髪を梳く(新一×蘭)
さらさら、さらさら。
飽きることなく一定のリズムで髪を掬っては、その感触を確かめるように梳いていく手が、
蘭は気になって仕方なかった。
場所は工藤家リビングのソファー。
手の持ち主はもちろん、海外在住の両親に代わってこの家の主人となっている工藤新一。
ちなみに、蘭の幼なじみ兼恋人だったりもする。
ソファーに大きく寄りかかりながらその長い足を組んで座る新一は、静岡県警の横溝刑事から
送られてきた調書のFAXを読んでいた。
この前、頼まれて解決した事件の犯人の供述に不審な点があるので、少し見てもらえない
だろうかと頼まれたのだ。
分厚いFAXの束をめくりながら黙々と読んでいる新一は、けれどちゃっかり蘭を横に座らせて
華奢な肩に左手を置いていた。
そして、手慰みのように蘭の耳元の髪を弄っている。
蘭も始めのうちは新一の邪魔をしちゃいけないと、雑誌を広げてそれに集中しようと
していたのだけれど。
優しく髪に触れる手が何だかとても気恥ずかしくて、落ち着かない気持ちにさせられる。
蘭はどうにも我慢できなくなってとうとう声を上げた。
「ねぇ、新一?」
「ん?」
「手をどけてくれない?」
新一はFAXから目を放して、おずおずと切り出した蘭に視線を向けた。
「なんで?」
「なんでって、気になるの。・・・なんか恥ずかしいし。」
「別に恥ずかしがる事なんてねーだろ?誰が見てる訳でもねーんだし。」
「それはそうだけど・・・。」
もごもごと口を噤ませた蘭を眺めながら、顎に手をやってちょっとだけ考える素振りを見せた
新一は、蘭の頬に手を当てて真っ直ぐに視線を合わせた。
「オレに触れられるのって嫌か?」
「ちょっ・・・新一!」
蘭が慌てて新一の手を外そうとするが、いくら空手をやっているからといって男の新一には
敵わない。
それ以前に新一に本気なんて出せないから、蘭に勝ち目はないのだけれど。
「嫌?」
「・・・イヤじゃないけど。」
蘭の頬に手を置いたまま、心の奥底まで見通すような視線の新一に重ねて訊ねられて、
蘭が渋々と本心を口にした。
そう、決して嫌な訳ではないのだが。
優しく触れる手は驚くほど心地良くて、何だかぽ〜っとしてしまって、心がどこかに飛んでいって
しまいそうな自分が怖かったというのが真相だったりする。
そんな蘭の気持ちを分かっているのかいないのか、新一がにっこりと笑う。
・・・蘭が弱い満面の笑みで。
「じゃあ、問題ねーだろ。」
そう言って蘭の頬から手を放すと、新一は再び調書のFAXを読み始めた。
左手は変わらずに蘭の肩にかけたままで。
蘭は軽く新一を睨んでみたけれど、あっという間に新一は調書に集中していて、その横顔も
カッコ良いと思ってしまった自分に蘭は軽く溜め息をついた。
新一にベタ惚れな自分を再確認してしまった。
それでも、丸め込まれてしまったのが悔しくて、負け惜しみなんて口にしてみる。
・・・少々子供っぽいと自覚はあったけれど。
「勝手なんだからっ!・・・今日は夕飯抜きね。」
「それは困るな。」
聞いているとは思っていなかった言葉に返事があって、蘭は驚いて軽く目を見開いた。
蘭に関しては地獄耳になるという新一の特技を蘭はイマイチ分かっていなかった。
「まぁ、そーいう事ならオレが腕を揮いますか。」
「え?」
「いつも作ってもらってるから、たまにはな。」
ビックリしている蘭に新一は口の端を上げてイタズラっぽく笑う。
「それで?珍しいオレの手料理も食べずに帰っちまうのか?」
〜〜〜もう本当に。
新一にはどうしたって敵わない。
諦めの溜め息と共に蘭は心の中で白旗を掲げた。
「・・・ご馳走になりマス。」


蘭ちゃんのさらさら髪か、青子ちゃんのふわふわ髪か迷ったのですが、蘭ちゃんにしてみました。
あのさらさらロングヘアは憧れです。いつも伸ばしている最中に我慢できなくなって
切っちゃうんですよね。って、話が脱線。
そういえば、うちの新一はどーして気障なんでしょーか。今回は俺様でもあるし。
次は蘭ちゃんの手の平で転がされてる新一を書きたいです(笑)


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