束の間の休息・・・天翔ける庭にて
By LAIA様


人間、それは定められた地に生まれ、その地で暮らし、やがて土に帰っていく。
だが、人は何処から来て何処へ行くのか?その答えを知るものはいない。
そして、誰もが一度は夢を見る…空、地上より見上げることのできる何処までも果てしなく続く青い空を
駆け巡ることを。
しかし、あの空には天かける船を使わないかぎり辿りつくことなどできはしないのだ。
もしくは、空を駆け巡る鳥にでも生まれ変わらないかぎり、天空を制する事など不可能に近い。
だが…その常識を覆す町が在る事を、地上に住む者達は知っていた。
その町の名はシェバト、その町で生まれたもの達は地上で生まれゆく者達とは
まるで逆の運命を辿ってゆく。
空の上で生まれ、空の上で暮らし、空の上で天命を全うする。
彼らは、幾百年もの月日の中で天空より下に住む者達を見下ろし…地上の歴史を見守ってきた。
そして、今もそれは続いている。
無限に広がる青い空を駆け巡り、天空より吹き付ける悠久ともいえる風をその身に受け、
シェバトの人々は天空の町で暮らしているのだ。
そして今から語られる物語は、シェバトの長い歴史の中に刻まれたほんの1ページにしかすぎない…
だがこれだけは忘れないでほしい…いつの時代でも長いとも短いとも言える自分自身の歴史に
1ページを刻むことのできる若者達がいることを…
では、語り始めよう…若者達が歩んでいった、小さな物語を…

ここはシェバトの中心、シェバト王宮の屋上にあるテラス。
ここから見える空の眺めはまさに絶景であった。
どこまでも果てしなき青の海が続き、それを覆い尽くすような白き雲が間近で感じられる。
シェバトの中でも正に1、2を争うほどの眺めの良さであった。
だが、この場所を訪れる者は今ではごく少数しかいない…
シェバトの現女王であるゼファー…何時までも変わらぬ姿で時を過ごす少女…
それは自らが招いてしまった500年前の悲劇への後悔なのか…
それともかつて自分が愛してしまった人への思いを思い出しているのか?
彼女が何を思ってここを訪れるのか、それを知るものは今となってはいないにひとしい。
それともう一人、この場所を訪れるまだ幼さの残る少女がいた…
彼女の名はマリア…もっともこの場所を心の拠り所にし、何時までも変わらぬこの同じ風景を
愛する少女。
マリアは今でこそフェイ達と共に運命とも言えるカレルレンとの戦いに見を投じてはいるが、
かつてはこのシェバトを守るために戦いつづける守護役であった。
彼女は今にいたる戦いの日々の中で、ソラリスの機械人形となってしまった父と直面し
それをのりきったのだ。
だがその戦いの中でマリアは唯一の肉親の一人である父を失ってしまった。
その父への悲しき思いを洗い流すために、この場所へ今でも足を運んでいる。
しかし、今日は彼女にとって特別な日であった。
日々自分と戦ってくれる友人達の気分を少しでも和らげようと、ここで休息をとらないかと誘ったのだ。
少しばかりバルトやリコは渋っていたのだが、エリィやマリアの強い押しに負けてしまい
結局彼らも同行することになった。
それとマルーもシェバトの町や王宮から見える景色をぜひ見てみたい!との思いが強くなってしまい、
彼女もはんば無理矢理同行する形にになってしまったのだ。
「わぁ〜♪凄い凄〜い♪まさか僕が空の上に浮かんでいる町からこの下を見下ろしているなんて、
 アグネスにも創造できないんだろうなあ…」
「たくっ…これだからマルーの奴は何時までも子供扱いされるんだよ。
 少しは落ち着いてティータイムを楽しめっての」
既に屋上では休息を取るためのお茶会が始まっている。
バルトもマルーの姿を見ていてつい言葉がすべってしまっていたようだった。
「まあ、たまには良いんじゃないか?こういった楽しい雰囲気もさ…ここのところまともに休む暇さえ
 なかったんだし」
「そうだな、戦士は休息を取ることも必要だ。こうしてリラックスできるのも今日だけかも
 しれないんだからな」
「バルト、彼女もここに来るのを楽しみにしていたんだ。君も少しは女性を大切にすることを覚えても
 いいんじゃないかい?」
フェイの意見にリコが相槌を打ちながら言う。
その手には既にユイが入れたハーブティーが入ったカップが握られていた。
ビリーもバルトに対して自分の意見をはっきりと言う。
「皆さん!お茶菓子を持ってきました!じっくりと味わって食べてくださいね」
「あらあら、マリアちゃんたら…よっぽど嬉しいのね。こうして皆とこうして触れ合えることが…」
それと同時にマリア達がコースターの上にのった焼き立てのクッキーを運んでくる。
嬉しそうなマリアを見ながらユイは微笑んでいた。
「ユイ、このハーブティーはあなたが入れてくれたんですか?」
「ええ、そうよあなた。シェバトの庭園で採れたハーブをわけていただいたの。
 そのハーブを調合して入れたのよ」
「そうですか。何時もながら落ち着きますね…あなたが入れてくれたお茶をこうして飲んでいると」
「そうでしょ。でも今日作ったこのハーブティーは特別なのよ。なんていっても、太陽の光をもっとも近くで
 浴びて作られたハーブなんですから」
こちらがわではシタンとユイが久々に夫婦水入らずの時間を過ごしていた。
その側ではミドリとプリムが空の上から見える景色を楽しんでいる。
その中にはエメラダも混じっていた。
「空…綺麗…」
エメラダがぼそっと呟く。
「しかし…なんでお前らはいっつも喋らないんだ…(汗)おいらも長年ミドリと付き合っているのに。
 少しはおいらにも話し掛けてみろよ?」
その横ではダンが業とらしくミドリ達にたいして悪態をついていた…(笑)
「フェイしゃん〜♪今日はわたチュと朝まで飲みあかしましぇんか〜♪」
何故か顔を真っ赤っかに頬を染めたかの如く顔を赤くしたチュチュがフェイに迫っている…
「あら?チュチュどうしたの、顔を赤くしちゃって…それとこの匂い?まさか、お酒!?」
その時、エリィがチュチュから発せられていた異臭に気がついた。
「そうでチュよ〜エリィしゃん♪これぞチュチュ一族に伝わる一族秘伝の伝説のお酒!
 美徳三昧でチュ!!(笑)」
「よりによってなんでお酒なんか飲んでいるのよ!今日はお茶を飲むためにここに集まったんでしょ!」
「ふっふっふ…甘いでチュね〜エリィしゃん…楽しい時はお酒!これしかないんでチュよ!!
 という訳でフェイしゃん、今日は朝まで一緒に飲み明かしましょうでチュ〜♪」
「どわあ〜!チュ…チュチュ!俺に絡んでくるな!!落ち着け!落ち着け〜!!」
フェイは思わず叫び声をあげていた…
「チュチュ…あなたって人はいい加減にしなさーい!!」
それに続いてエリィが怒り始める。
正に熾烈なフェイを巡る争いの始まりである!(^^;)
「さて…マルー。俺達は向こうで空でも眺めていようぜ…」
「えっ…若、止めなくていいの?若!ねえ待ってよ!!若ってば〜!」
バルトはマルーを誘いその場をそそくさと去っていく。
「フェイのキム、大変そう…あたしがフェイのキムを守らなきゃ!フェイのキムー!!」
エメラダは溜まらずにフェイのもとへと走っていた。
どうやら彼女はフェイのこととなると性格が変わるようである…
「こいつは面白い…眺めているだけっていうのも悪くはないな」
リコは別のテーブルに座りながらそれを眺めていた。
シタン達は相変わらず夫婦だけの時間を楽しんでいる。
「マリア、宜しければ僕と一緒にハーブティーを飲みませんか?」
「私で宜しかったら喜んで!」
ビリーとマリアは、どうやら一緒にお茶会の続きをするようだ。
「プリムちゃん達も一緒にどう?皆そろって飲むお茶も美味しいわよ♪」
マリアの誘いにプリムとミドリものったようだった。
ビリーとマリアの後に彼女達もついていく。
「あ!おいらもおいらも〜♪」
なぜかダンも一緒になっていた。(笑)
彼はどうやら彼女達に自分のことをかまってほしいようだ。
そのころ…バルト達はテラスの下でシェバトから見える空を背にハーブティーの香りを
楽しんでいたのだった。
マルーは呆れた顔でバルトの顔を眺めている。
「もうっ…若ったら。なんでフェイ達の争いを止めてあげないの!」
「別にいいだろう?あいつらはあいつらで楽しくやっているんだからよ…」
バルトは疲れた顔でマルーの質問に答えている。
実は彼もあの争いを見て楽しんでいる者の一人であった。
「しょうがないな…若ったら。フェイ、無事だといいけど」
「大丈夫だろ、あいつなら。こんなことでやられるようなやつじゃないって」
「そうかなあ〜?まあ、いっか!僕もせっかくシェバトに来たんだし、ゆっくりと楽しまなきゃ!」
マルーもバルトの意見に流されてしまい今ではすっかり楽しむことしか頭にないようだ。
「若、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…?」
「なんだよ聞きたい事って?」
どこかで見た場面を思い出しつつ、バルトはマルーの質問が何か聞き出そうとしている。
「何で僕と2人っきりで空を眺めようなんて言い出したの?」
「そ、それはだなお前とこうして2人でいるのも悪くはないんじゃないかな〜って思ったからさ(汗)」
バルトは思わず慌ててしまった、まさかマルーのほうからこんな質問をしてくるなんて
思ってもいなかったからだ。
「えへへ…そうなんだ…」
マルーは微笑みながらバルトに言った。
「あの時、僕に言ってくれたよね。何時何処にいても僕のもとに駆けつけてくれるって…」
「ああ、言ったよ。約束は約束だからな!約束をやぶったりしたら海の男としての名が廃るって!!」
バルトは照れた仕草を見せながらもはっきりと自分の思ったことをマルーに伝える。
それを聞いたマルーさらに嬉しくなってしまい満面の笑みを浮かべた。
そして…前からバルトに言いたかったことを思いきって言ってみる事にした。
「若…あれは僕へのプロポーズ…として受け取っていいの…」
「うっ!ぶはっっっっ!!げほっ!げほっ!げほっ」
マルーの思いもよらぬ言葉にバルトは飲みかけのハーブティーを勢いよく吹き出してしまう。
よりによってこんな展開になるとは…バルトは驚きを隠せないそぶりをマルーに見せてしまった。
まだ咳き込んだ喉を落ち着かせるようにバルトは言い出す。
「ごほっ!ごほっ…ちょ、ちょっと待てよ!どう〜していきなりこんな展開になるんだ!!」
「どうしてって…あんなことを言われたら、誰だって告白として受け取っちゃうと思うな…それに…」
マルーがその先の言葉を言いかける。
バルトは自分自身の心臓の鼓動が早くなっていくのを感じていた。
はたしてその先を聞くべきなのか?聞き流すべきなのか?
その二つ選択肢を選ぶことだけが彼に与えられたのだった。
だがたまらずに口から言葉が出てしまった。
「マ、マルー…お、俺…」
「僕、小さい頃から若のことがす…」
2人が同時に自分の思いを伝えようと言葉を言いかけたその時である。
城壁の上から何か叫ぶ声が聞こえてきた。
「うわああああああぁぁぁぁ!!バルトー!そこをどけ〜!!」
バルトとマルーが何かと思い、慌てて上を見上げみる。
「げげっ!フェ!フェイ!!何でお前が空から降ってくるんだー!!!」
「わ、若!フェイ!危ない!!」
顔を引き攣らせた涙顔のフェイが屋上からバルトに向かって降ってきた。
マルーはバルトとフェイに注意を促したが一足遅い。
バルトは紙一重でフェイを避ける、フェイはそのまま勢いよく地面に激突してしまった。
「う、うがっ…ごごご…な、なぜに俺がこんなめにあうんだ…(がくっ)」
あまりの激突の痛みにフェイは地面に倒れてしまう。
どうやら見事に地面のKO勝ちのようだ。(^^;)
「フェイー!大丈夫〜!!しっかりしてー!!」
「フェイしゃん!なんでわたチュの愛の抱擁から逃げ出したりするんでチュか〜!!
 それってりっぱな罪でチュ!!」
「フェイのキム〜!!あたしも一緒に死体ごっこする〜!!(笑)」
それと同時にエリィが心配そうな表情を顔に浮かべ階段を駆け下りてくる。
チュチュは己の願望をはっきりと言いながらエリィに続く。
もちろんその手には一升瓶が握られていたことは言うまでもない。(笑)
エメラダはフェイともっと一緒に遊んでほしいとでも言うように屋上から飛び降りてきた。
「エ、エリィさん…一体何があったの…?(汗)」
「どうやら、やっとフェイを巡る争いに決着がついたみてえだな。
 フェイのやつ、幸せそうな顔をして気絶しちまいやがって(苦笑)」
マルーも心配そうな顔をしてエリィの顔を見る。
バルトは呆れた顔をしながら気絶しているフェイの顔を見ていた。
どうみてもフェイの顔はもういやっ!という表情を浮かべながら気絶しているのだが。(笑)
「まさか私達がフェイを取り囲んで話を続けている間に飛び降りるなんて夢にも思わなかったわ…(泣)」
「そんなことより…勿論こういった時は看病でチュよね〜♪看病といったら勿論口付け!
 これに決まりでチュ!!」
「口付け!それじゃあたしが一番ね!!フェイのキム〜♪」
どうやらまたフェイを巡る争いが勃発したようだ。
バルトとマルーはすぐさまその場を後にすることにした。
「マルー…この場はひとまず逃げるぞ!」
「僕もその意見に賛成するよ!それじゃあ、若!」
「おう!それ!ダッシュだ!」
バルトとマルーは合図と同時にホールへと続く階段を走り始めた。
その後ろではエリィ達が言い争っている声がテラス全体に響いている。
シタンやビリー、マリアやリコ達は苦笑しながらその光景を眺めていた。
「若!今さっき言いかけた言葉の続き…絶対何時か若に聞いてもらうからね!」
息を切らせながらマルーとほぼ同じスピードで走っているバルトににたいして語りかける。
「わかったよ!そん時まで俺が待つことができたらな!」
バルトも少し後方にいるマルーに向かって今できる精一杯の返事をマルーに向かって返した。
2人は和らいだ笑顔を作りながらホールへと向かって走っていく。
その後ろではこれから人類に希望の風を運ぶであろう悠久の風が吹き始めていた。
まるで今を生きる若者達を祝福するかのように…


<了>




こういう優しい時間がずっと続いて欲しいですね(^^)
それぞれのキャラの特徴が良く出ていてすごくいいです!
しかも、最後は若マルですし♪
フェイのバカと言いたいところですが、フェイも色々大変みたいだから止めときます(笑)
LAIAさん、どうもありがとうございました!!



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