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Correspondence
−S&R−


コールは3回までと決めていた。
その音に気がついたのはきっと必然。



Truru Truru Truru



蘭は1度寝ちまうとなかなか起きないから。
やっぱりダメか。
そう思って電話を切ろうとした瞬間だった。
半分寝ぼけながら枕元の携帯電話をとった。
着信画面には『新一』の文字。
がばっと起き上がって慌てて電話に出た。



「新一!?」

「蘭・・・。」



待ち望んでいた声がいきなり聞こえて。
まるで夢のようで。
新一の声を聞くのは3日ぶりだった。
ちょっと元気がないのは気のせい?



「もしもし、新一?どうしたの?」

「あ、いや、オメーが電話で起きるなんて
珍しいなと思って。」



自分でも間抜けだと思う反応しか出来なかった。
随分な新一の言い草にムッとした。



「あのね、起こした人が言うセリフ?」

「そうだな。起こしてごめん。」



蘭の言葉はもっともで素直に謝る。
喧嘩がしたくて電話した訳ではないから。
いつもと違う新一の反応に心配になる。
新一は泊り込みで捜査に出かけていたけれど。



「・・・何かあったの?」

「いや、何もねーよ。」



反射的に言ってしまったのは男の意地?
真実を隠している新一の声。



「嘘。何かあったでしょ?」

「何もねーって。事件は無事解決したし。」



ただ、その結末が哀しい物だっただけで。
罪を犯したあの人の声が耳に残っている。
真実は時にひどく残酷で。
それでも、探偵を辞めるつもりはないけれど。
少しだけ傷ついて疲れていた。
だから、蘭の声が聞きたいと願った。
新一に話すつもりがない事が分かった。
事件は人の醜さや汚い面を見せるから。
新一はわたしには事件の詳細は語らない。
それが哀しい事件であればあるほど。
寂しさを感じるけれど、それは新一の優しさだから。
わざと明るい声を出して話題を変えた。



「お疲れさま。明日には帰ってくるの?」

「あぁ、事後処理とかあるから夕方になっちまうけど。」

「じゃあ、夕飯を作って待ってるね。
何か食べたいモノある?」



無邪気に話す蘭の声が優しい。
その温かな存在を腕に抱きたいと思った。
新一が非日常から日常に戻れるように。
わたしに出来るのはそれ位だから。



「蘭、かな。」

「な、何バカな事を言ってるのよ!」



焦った蘭が浮かぶようで笑いが漏れた。
そして、笑えた自分に驚いた。
新一の言葉に頬に熱が走ったのが分かった。
でも、笑い声が聞こえたのが嬉しくて。



「ふざけるなら切るわよ?」

「ちょっと待った。切るなって。」

「だったら真面目に答えて。」



さっきのも真面目だったんだけどな。
そう言ったら怒らせちまうのは分かってるから。
怒ったフリで会話を続けながら。
いつも通りのやりとりに内心ホッとしていた。



「じゃあ、ハンバーグ。
もちろん蘭お手製のな。」

「新一ってホント、ハンバーグ好きね。」

「誰が作った物でもって訳じゃねーぜ?」



蘭が作ってくれる物だから好きなだけで。
本当はハンバーグじゃなくても良いんだけど。
わたしが作ったモノだからって自惚れても良いの?
聞きたいけど聞けなくて口から出たのは別の言葉。



「えっと、それじゃハンバーグ作って待ってる。」

「あぁ、楽しみにしてる。」



照れてるのをごまかすような蘭が可愛くて。
いつの間にか心が温かい物で満たされていた。
蘭に電話して良かったと、そう思った。
新一の声はどこか笑いを含んでいる。
さっきの言葉に照れてるなんてお見通しなのかな?
ふと時計が目に入ってもう遅い時間なのに驚いた。



「そろそろ切るね?
気をつけて帰ってきてね。」

「分かった。」

「じゃあ、おやすみなさい。」

「そうだ、蘭。」



電話を切る前に気持ちを伝えたいと思う。
切ろうとしたのを止められて不思議に思って。



「なに?」

「愛してる。」

「な、何よ、急に。」

「急に言いたくなったんだ。で、蘭は?」

「知らない!」

「なんだよ、言ってくれねーの?」



蘭からも気持ちを聞きたくてねだってみる。
沈黙が流れて蘭の言葉を待った。
甘えたような声に言おうかなと思ったけれど。
そんな大事なコトは電話越しで言いたくないから。



「・・・そうね、明日新一に直接言ってあげる。」

「え?」

「だから、今日はもうゆっくり寝て。
明日は早く帰ってきなさいよ。」

「・・・了解。」



きっとその言葉は日常へと戻る為の切符で。
返ってきた言葉は短かったけれど嬉しそうで。



「それじゃ、おやすみ。」

「おやすみなさい。」

プツッ ツー・ツー・ツー



蘭の声が携帯電話から聞こえなくなる。
それに一抹の寂しさを感じながら。
1人、眠りについた。
明日の今頃、腕に抱いているだろう存在を夢見ながら。
新一の声が聞こえなくなった携帯電話を眺めて。
ちょっとした寂しさを感じたけれど。
この夜が明けたら新一は帰ってくるのだから。
それを楽しみにして、今は静かに目を閉じた。





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1人眠レナイ夜ニハ
君ノ声ヲ聴カセテヨ?
ソレダケデキット
優シイ夢ガ訪レテクレルカラ。

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