Password 《hideout》


Are you ready? →→→→→→→ Secret




Correspondence
−K&A−


「まぁたハズレかよ。まったくあのお嬢さんはどこに姿を隠してるんだか。」
白い怪盗の姿に扮した快斗は、今盗んできたばかりの宝石を月に掲げて1人ごちた。
軽い口調とは裏腹に、それを呟く声は低い。
永遠の命を与えるという伝説(といっても嘘だか本当だか眉唾物だと快斗は思っているが)を持つ赤い石、
パンドラを求めて怪盗キッドとして快斗は盗みを重ねているが、こうも振られてばかりだとぼやきたくもなる。
快斗はふぅっと溜め息をついて重苦しい気持ちを振り払うと、ふと思い出してスーツのポケットから携帯電話を
取り出し電源を入れた。
仕事中に携帯電話がなって集中力が途切れでもしたらシャレにもならないと、安全な場所まで
逃げ遂せるまではいつも電源は切ってあった。
携帯電話の画面に光が戻ると、ちょうどタイミングよく短い着信音が鳴った。
誰かからメールが届いたらしい。
白い手袋をはめたままの手でボタンを押すと、到着したばかりのメールが現れる。
差出人は青子。
(オレが仕事中にメールを寄こすなんて珍しいな。何かあったのか?)
訝しく思いながら快斗はメールの本文を呼び出した。


   『コラー!どこをほっつき歩いてるの?早く帰ってきなさいよ!!』


・・・思わず快斗の肩から力が抜けた。
携帯電話を持つのとは逆の手で前髪をぐしゃりと掴むと、快斗は乾いた笑いを浮かべた。
青子だよなぁと思う。
天下の怪盗キッドにこんなメールを送ってくるなんて、青子以外にはとても出来やしないだろう。
それでも、それが何だか嬉しいのは何故?
「ったく、青子のヤツ。」
快斗は苦笑を穏やかな笑みに変えて、再度メールの画面を眺めた。
きっとこれは快斗を日常へと還してくれる道しるべ。
早く彼女の元へ戻ろうと思う。
背中のハングライダーを広げようとした時、また携帯電話が音をたてた。
画面を開くとまたまた青子からのメールで。


   『夜食作って待ってるから、気をつけて帰ってきてね。お仕事、お疲れさまv』


急速に疲れが癒されていくような、そんな感覚。
『お疲れさま』の一言がこんなにも嬉しいなんて。
諸手を上げて降参、といった気分だった。
なんで彼女はこんな文字の羅列だけで自分の気持ちを軽くしてくれるのだろう?
いつまでも見つからないパンドラ探しに抱えていた焦りや苛立ちなど、快斗の中にカケラも残っていなかった。
メールから伝わる青子の温かな気持ちに触れて、無性に彼女の柔らかな笑みが見たくなる。
返事を送る暇さえも惜しくて、快斗は今度こそ白い翼を広げて闇に瞬く光の海へと飛び出した。
愛しい彼女へと向かって、空を駆ける。





青子はベランダに立って、白い影が舞い降りてくるのを待っていた。
手に持っているのは先程快斗にメールを送った携帯電話。
いつもより帰りが遅い彼が心配で、逡巡した末に送ってしまった。
仕事の邪魔になるような事はしたくないと思っているけれど、快斗が仕事中は電源を切っているのは
知っているから、メールを送るくらいならいいだろうと自分に許した。
彼が無事に帰ってくるようにと、青子にとっては一種のおまじないのつもりで。
青子はうんともすんとも言わない携帯電話を見つめて重い吐息をはいた。
携帯電話から視線を上げて再び前を向いた青子の視界を何かがよぎった。
嬉しい予感を感じながら青子は目を凝らした。
段々と近づいてくる影は待ち望んでいたモノで、青子の顔には自然と笑みが浮かぶ。
しばらくして翼を閉じた白い影が音もなく青子の前に舞い降りた。
「お帰りなさい!」
快斗が帰ってきたのが嬉しくて抱きつきたかったけれど、ベランダにいつまでもいて人目についたら
いけないと、青子は快斗の腕を引っ張って自室へと戻った。
ガラスのドアとカーテンを閉めて、改めて快斗へと向き直る。
白い衣装に身を包んだ快斗にどこにも怪我がない事を確認して、青子はホッと安堵の息を漏らした。
それから、帰ってきてから快斗が一言も発していないのに気がつく。
見上げた快斗の顔は不機嫌の色を映していて、思い当たる事があった青子はおずおずと謝罪の言葉を
口にした。
「あの、ごめんなさい!お仕事の邪魔をしちゃって。」
「へ?」
何の事か分からないといった顔をする快斗に、青子も小首を傾げた。
「メールを送ったコト、怒ってるんじゃないの?やっぱり迷惑だった?」
さっきの言葉と合わせて青子が何を気にしているか理解した快斗は、あぁと首を横に振った。
「迷惑じゃねーよ。青子からのメール、嬉しかったし。」
「そっか、良かった。」
快斗は自分の言葉に安心したような表情を浮かべた青子を見つめた。
(やっぱりこれはどう見ても顔白いよな。)
快斗の視線に気がついた青子がきょとんとした顔になったのに、快斗は軽く息を吐いて青子の腕をとった。
「それよりも、オレが怒ってるのはこっち!」
青子の視界が白く染まる。
「か、快斗?!」
いきなり快斗の腕の中に抱き締められて青子が慌てて逃げようとする。
が、快斗はぎゅっと力を込めて更に強く抱き締めた。
「ったく、なんで外から帰ってきたオレと同じくらい冷えてんだよ?」
腕の中に閉じ込めた存在からいつもの温かさは伝わってこなく、快斗は眉をしかめた。
「いつからベランダに立ってたんだ?
 待っててくれるのは嬉しいけど、せめて部屋の中にいろよな!」
自分の所為で青子に風邪でもひかれたらたまらないと快斗は思う。
一方、快斗が自分を心配する余り怒っているのが分かって、青子は嬉しく思いながら彼の背中に腕を回した。
「だって、快斗の無事な姿を早く見たかったんだもん。
 怪我とかしてなくてホント良かった!」
快斗を見上げて満面の笑みを浮かべている青子は、理性を吹き飛ばしてしまうほど可愛くて。
「・・・オメーなぁ、そういう顔すんなよな。」
快斗は自分の中に芽生えた感情に忠実に従って、青子を抱き上げてベッドへと運んだ。
「ちょ、ちょっと待って!」
「やなこった。」
優しくベッドへと横たえられた青子が慌てて覆いかぶさってくる快斗を止めようとしたけれど、逆に手を取られて
シーツへと押しつけられる。
首筋に落ちてくる唇を感じながら、青子は流されまいと最後の抵抗を試みた。
「そ、そうだ!夜食作ってあるから食べてよ。」
「後で食べる。それよりも今は先に2人であったまろーぜ?」
快斗は見下ろしている青子へイタズラっぽく笑いかけた。
「青子がこんなに冷えてるのはオレの所為だからな。責任とってあっためてやるよ。」
「・・・バ快斗なんだから。」
軽く拗ねたように呟くと、青子は観念して瞳を閉じた。


2人に温かさが戻ってくるまで、あともう少し     .





++++++++++++++++++

冷タイ機械ニ並ンダ文字ノ羅列デモ
コンナニモ心ヲ温カクシテクレルト
改メテ気ヅカサレタ。
教エテクレタ君ニ感謝。

++++++++++++++++++





Home